出西窯 しゅっさいがま

美意識の革命によって生まれた新しい価値観暮らしを豊かにする民芸の美 infomap
出雲地方を流れる斐伊川

出雲地方を流れる斐伊川

赤瓦が美しい工房

赤瓦が美しい工房

出雲地方を流れる斐伊川のすぐそば、穏やかな田園地帯のなかに窯元を構える出西窯。
風景に馴染む日本家屋の工房で、日々新しい器が生み出されています。

作業工程が見学できる工房内

窯焚きに使用する島根県産の松の割木

高温の中で一昼夜、薪を投げ続ける厳しい作業。2日間で約5000個の陶器焼き上げます。

工房は誰でも自由に見学ができ、所狭しと置かれた材料や棚の中で、職人たちが黙々と作業に没頭し、実際に作り上げていく工程を見ることができます。
工房の東側にはレンガを積み上げた大きな登り窯があり、現在も年 3~4 回の窯焚きが行われています。こちらも常時見学ができますので、タイミングがよければ窯焚きの様子を見ることができます。
さらにその奥には原料場があり、原料となる粘土を原土から精製しています。このように土作りから焼き物の全ての工程を同じ工房で行っているところは、現在では珍しくなってきました。

「無自性館」では数千点が展示販売されている

工房の西隣には「無自性館」と看板が掲げられた展示販売館があります。
明治初期の日本家屋を移築したもので、木の風合いが美しく、明るい吹き抜けの館内には数千点以上の器が常時展示販売されています。

道具という観点の器たち

鮮やかな瑠璃色は「出西ブルー」と呼ばれる人気色

出西窯の器は飾り気のないシンプルなものが多く見られます。大切にしているのは「道具としての使いやすさ」。
器はどれも手に馴染み良く、陶器でありながら柔らかさがあり、温かみのある感触です。
存在感を持ちつつも主張しすぎず、和にも洋にも器の方が合わせてくれるようです。
電子レンジや食洗器にも使用でき、普段使いの陶器と同じように使えるのも魅力。
道具としての実用性に味わいのある美しさを兼ね備え、今日では多くの人に愛される出西窯ですが、今に至るには揺るぎない信念があったからでした。

日常に溶けこむ 気取りのない存在感五人の青年たちが探し続けた「用の美」

のどかな風景が広がる出西

出雲市斐川町出西。出雲の西という意味の出西とは、このあたりの土地の名前です。
昭和22年物資も食料も不足し、明日の暮らしもままならない戦後間もない頃、地元の幼馴染の青年たち5人が「何もないここから、自分たちでなにかできないか」と志を同じくして集まりました。
多々納弘光、井上寿人、陰山千代吉、多々納良夫、中島空慧、全員農家の次男三男で、19歳20歳の若者グループでした。
彼ら5人は最初から陶芸に対して特別な想いがあった訳ではなく、「手作りで何かできないだろうか?」という漠然とした思いから、紆余曲折を経て行き着いた先が焼き物でした。この土地の粘りの強い土が、焼き物に向いているという話を聞いたのがきっかけでした。
とはいえ、陶芸に関して経験も知識もなく全くのゼロからのスタート、一から窯を作り、手探り状態の創業でした。
その当時出雲市にあった工業試験場の技師に指導を受け、最初は古伊万里や京焼のような美術的鑑賞価値のある陶芸品を見よう見まねで作っていましたが、ある日松江の工芸家である金津滋が窯を訪れ、「君たちの仕事には、美しさも志もない」と指摘され、民芸運動を起こした柳宗悦の本を渡されます。
自分たちの方向性に迷いを感じていた彼らはその本に多大な影響を受け、同じく民芸運動を展開していた安来市出身の陶芸家、河井寛次郎に指導を懇請し、その後多数の技術者たちから指導を受けることができたのです。

民芸運動とは?

それまで顧みられることのなかった、日常的な暮らしの中で使う手仕事の日用品の中に美しさ(用の美)を見出し活用しようという日本独自の運動。
柳宗悦を中心に陶芸家の濱田庄司や河井寛次郎らとともに展開され、全国の無名の職人が作る民衆的工芸品の中に美を見出し、広く伝える活動のために全国各地を精力的に回りました。民芸という言葉は民衆的工芸品の略であり、彼らによって生み出された言葉です。

多々納らの要請を受け出西窯を訪れた河井寛次郎から指導を受けることで、芸術品を目指していた青年たちの価値観は大きく変わります。そしてその繋がりから柳宗悦や濱田庄司、鳥取出身の民芸運動家である吉田璋也、イギリスの陶芸家バーナード・リーチらとも交流が生まれました。
民芸運動の重鎮たちからその精神を学び、また修行に出て技術指導を受けることで彼ら5人は確実に実力をつけていき、思考錯誤を繰り返すことで、現在のスタイルを築き上げていったのです。

こだわり続ける無自性の精神出西窯であり続けるための共同体スタイル

日本の原風景を走る一畑電車

「その器は唇に喜びがあるか?」 多々納らに指導をした陶芸家の一人、バーナード・リーチの言葉です。 コーヒーカップであれば、持ちやすいのか、口にあてた時に喜びがあるか? つまりその器でコーヒーがどれだけ美味しく飲めるのかが、「道具」としての価値ということになります。 リーチの教えを大切にするように、出西窯は「道具」にこだわります。 そして美しいフォルムと深みのある色彩は、美術的観点からも高い評価を受けており、その証拠に、過去多数の公募展に入選・入賞しています。 美を追うのではなく、実用を求め行き着いたところに美があった、まさに「用の美」という民芸運動の思想の元に生まれた器であると実感させられます。

「無自性館」、展示販売館に名付けられたこの「無自性」とは、哲学者山本空外師より教えられた言葉で「衆縁に従るが故に必ず自性無し(世の中は何もかも"おかげさま"によるもので、自分の手柄などどこにもない)」という意味だそうです。
その理念に従うように、この出西窯では材料となる粘土や釉薬、薪などの原料に至るまで島根県産のものにこだわっています。土地から与えられたもの、多くの人たちの支えによるもの、自分たちがこうして器造りを続けられるのは、そうした「おかげさま」があるからという強い信念があるのです。
そして窯主を持たず、一つ一つの工程が共同作業であるのも特徴。
ここには個性を打ち出す芸術家はおらず、どんなに名が売れても高価になってしまっては多くの人に使ってもらえない。自分たちの作っているものはあくまでも台所の道具であるという同じ志を持った職人たちの共同作業場なのです。
苦労も困難も喜びも共同体で分かち合った5人の青年たちの信念は大切に今に受け継がれ、現在18人の共同体となって今日も「台所の道具」を作り続けています。

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info詳細

名称 出西窯(特集記事)
カテゴリ 歴史・文化 その他
住所 島根県出雲市斐川町出西3368
問い合わせ電話番号 0853-72-0239
営業時間 9時30分~18時
定休日 毎週火曜日(祝日は開館)、元日
駐車場 有り 40台
ホームページURL
交通アクセス ■鉄道でお越しの方
JR 出雲市駅よりタクシーで約10分(約6km)

■飛行機でお越しの方
出雲空港よりタクシーで約20分(約11km)

■自動車でお越しの方
山陰自動車道斐川ICより約7分(約5km)
斐川ICを下り、最初の信号を左折(看板有)し、道なりに(簸川南広域農道(通称出雲ロマン街道)~県道197号経由)まっすぐ進んでください。

国道9号より神立橋東詰交差点を南に折れ、約3分(約2km)
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